【第17号】疲労・脳疲労のセルフケア

疲労・脳疲労のセルフケア

 

1.疲労および脳疲労とは

1)疲労の定義:日本疲労学会は、「疲労とは、過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって

生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態」 (平成22年発表)と定義づけられています。疲労については、「疲労」と「疲労感」に区別して用いられることがあります。「疲労」は心身への過負荷により生じた活動能力の低下を言いますが、時に「疲労感」を伴わない「かくれ疲労」が有ります。この状態は時に過労死に繋がることもありますので要注意です。

2) 疲労の分類:生理的疲労と病的疲労、急性疲労と慢性疲労、身体的疲労と精神的疲労、そして疲労感の内「かくれ疲労」に分けられます。更に近年では「脳疲労」が注目されています。

3) 脳疲労:脳疲労の概念を提唱したのは、藤野武彦(九州大学名誉教授)です。情報過多(ストレス)の結果による脳機能の低下した状態をいいます。その機序は、大脳新皮質と大脳旧皮質の関係性が破綻し、正常な機能を果たせなくなったことによるとされています。

また徳永雄一郎氏は、「脳疲労」とは、「脳の働きのひとつである集中力や判断力が低下して、通常の就労や生活に支障をきたす状態」であるとし、大半の業務が「脳を使う」時代に変わってきたことによると述べています。

4) 疲労感の中枢:疲労感を主る中枢は、脳内の「眼窩前頭野」です。しかし、仕事の満足感、達成感、報酬により、疲労感がマスクされることが有ります。例えば報酬の高い仕事などでは報酬により脳内に心地よさを誘発するβ-エンドルフィン、やる気を生み出すドーパミンといった物質が働いて、前頭葉を介して眼窩前頭野に抑制をかけることから疲労感を感じさせなくします。これがかくれ疲労です。

2.疲労は何故起きるのか

 疲労の原因は、多岐にわたります。精神的ストレス、運動、環境ストレス、

睡眠・リズム障害、消耗性疾患、感染症などです。なお本稿では病的疲労

(消耗性疾患、感染症など)については割愛し、主として精神的ストレス、運動、

環境ストレス、睡眠・リズム障などによる疲労について述べます。

疲労の機序は、活性酸素の増加によるとされています。働き過ぎや精神的ス

トレスにより活性酸素が増加し、抗酸化力の低下を招き、更に栄養と酸素がう

まく運ばれなくなって疲労が生じます(図1)。

疲労が生じると①刺激に対する反応が遅い、②思考力低下、注意力散漫、

③動作緩慢、行動量低下といったサインが現れます。具体的には、身体症状と

しては、①肩こり、②腰痛、③頭痛、④倦怠感・日中の眠気、などであり、

精神症状としては、①イライラする、②やる気がでない、③不安、④食欲不振、

などです。

3.東洋医学からみた「疲労」

疲れていると「元気がないね」と言われることが有りますが、東洋医学では「元気」が少なくなった状態を疲労と捉えます。東洋医学の「元気」は、体の根本的なエネルギーのことで、生命力、生きる力を指します。この元気を損なう病因が、精神的ストレスと働きすぎ、不摂生などの不良な生活習慣です。

4.疲労および脳疲労とセルフケアとツボ療法

基本は、良好な生活習慣です。睡眠、食事、休息をしっかりとることが疲労予防のポイントになります。脳疲労には百会に爪楊枝鍼で軽く30秒程度タッピングし、その後頭部全体に軽くタッピングしましょう。

太溪と関元には温灸を試みてください。

疲労回復には、なんといっても鍼灸とマッサージが効果的です。とても身心が軽く、爽快感を実感できます。