風邪(かぜ)とは
中国の古医書『黄帝内経素問』(前漢時代[紀元前206~紀元8]以前の成立)に「風邪(ふうじゃ)は百病の初め」「風邪は百病の長」と記されています。すなわち風邪は、様々な病気の原因になるということです。こうしたことから後世では「風邪は万病の元」と言われるようになりました。
私たちは、感冒を「風邪(カゼ)」と言っていますが、現代医学的にはウイルスの感染で起こる上気道の炎症で、鼻水・咳や痰・喉の痛み・発熱などの症状を呈します。多くは家庭の常備薬の「かぜ薬」を服用して元気になります。
何故、感冒を「風邪(カゼ)」と言うようになったのか、その理由は東洋医学にあります。東洋医学では、寒い風の邪が体を侵襲して発症させることから「風邪(カゼ)」と呼ぶようになりました。この病気は現代医学で言う「感冒」に当たりますが、 今も「感冒」よりは「風邪」と呼ばれます。
感冒と皮膚(肌)の関係について
感冒の原因は、100を超えるライノウイルスのいずれかによって引き起こされると言われています。大人の感冒の2分の1から3分の1は、ライノウイルスが原因だとされています。このため欧米では、ライノウイルスのことを「鼻カゼウイルス」と呼ぶ場合もあります。なおライノ( rhino )は、ギリシア語で「鼻」の意味のrhinに由来します。
身体に侵入してきたウイルスを退治する体の防御装置が、肌免疫(皮膚免疫)と呼ばれる自然免疫です。自然免疫は非特異的免疫とも呼ばれ、侵入してきた病原体(細菌、ウイルスなど)、いわゆる「敵」を発見し、それらをやっつけて健康を衛る装置です。つまり病気予防を担う生体防御機構の1つです。
肌免疫を担う免疫細胞は、図1に示す細胞たちです。NK細胞はナチュラルキラー細胞といい、皮膚から侵入してきた細菌やウイルスを捉えて破壊します。好中球、マクロファージ、樹状細胞は病原体を捕食し、退治します。また呼吸器系の粘膜からIgA抗体が分泌され、病原体を無力化します。
このように肌免疫や粘膜免疫がしっかりと機能していれば、感冒に罹ることはありません。肌免疫や粘膜免疫を活性化する「肌活」は、風邪予防に繋がります。そして新型コロナ感染症の予防にも期待されます。
風邪予防のセルフケア
免疫の働きを強くするには、以下のようなことが有効だとされています(乳酸菌B240研究所HPより)。
(1)口腔ケア:プロの口腔ケアを受けて口の中を健康に保った高齢者は、インフルエンザの発症率が低かったと報告されています。高齢者においては、口腔ケアは風邪予防だけではなく、誤嚥性肺炎の予防にも繋がります。口腔ケアの仕方をプロに教わることをお勧めします。
(2)適度な運動: 18~85歳の男女1002人を対象に、冬期12週間の上気道感染症(風邪)の症状と運動頻度の関係を調べたところ、運動する日数が多いほど風邪をひく日数も少なく、重症度も低いという結果でした。但し、過剰な運動はかえって免疫力を低下させます。
(3)その他:①笑うとIgA抗体が増える、②お腹を温めるとリンパ球(免疫細胞の一種)が増える。③楽観的思考は免疫力をUP、といった研究もありますので、参考にしてください。
ツボで風邪予防を
ツボでお薦めは「大椎」(だいつい)です。体表をめぐる経脈は、すべて「大椎」のツボで交わります。これらの経脈の中を流れている「気」は「衛気」と呼ばれる陽気の一種で、身体を外邪から衛ります。従って「大椎」をハンカチや小さなホカロンで暖めたり、ヘアドライヤーで暖めたりしてください。また温灸を据えることも効果的です。大椎を刺激すると体が温まることを実感できます。
大椎
首を前に傾けると首の付け根に飛び出る椎骨を触れることができます。それが第七頸椎棘突起です。その飛び出た頸椎の下のくぼみに大椎を取ります。