便秘は疾患名、症状名、状態名?
便秘の定義については、「各個人の健康時の状態に比べ排便回数が減少し、水分の乏しい硬い便を数日に1回くらい排出する状態をいう」とされてきましたが、新しく改定され、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」とされました。つまり、便秘は“疾患名”でも“症状名”でもなく、“状態名”であると規定されたのです。
ではその状態とは、「排便回数や排便量が少ないために糞便が大腸内に滞った状態」、あるいは「直腸内にある糞便を快適に排出できない状態」です。
便秘で悩んでいる人の有病率?
平成25年の便秘の有訴者率(千人当り)では、男性26%、女性49%でした。女性は男性に比してほぼ2倍の発症率です。いかに女性に便秘が多いか、まさに「便秘は女性の敵」であるといえましょう。また年代別にみると、50歳以下では女性が多いのですが、加齢により男女ともに有訴者率は増加していき、70歳以上では男性の比率が増え、男女差がなくなります。その原因は加齢により腸管運動が弱まり、排便機能が低下するためです。
どんな便秘で悩んでいるのでしょうか、その病態とは?
便秘を分類すると、大きくは(1) 器質的と(2) 機能性に分けられます。前者は、直腸がんや巨大結腸、巨大直腸などの病変が原因による便秘です。これらは医学的な対応が必要です。大腸の働きが悪いことによって起こる機能性便秘は、 (1) 排便回数減少型と (2) 排便困難型の便秘に分けられます。排便回数減少型では、①食事量や食物繊維摂取不足によって起こるものと、➁原因不明で腸の運動性が悪いことによるもの(弛緩性便秘)及び便秘型の過敏性腸症候群(痙攣型便秘)によるものが多いです。排便困難型便秘では、①硬便による排便困難・残便感を伴う便秘型の過敏性腸症候群によるもの、➁骨盤底筋の協調運動が悪いことによるもの、③腹圧が弱いために怒責力(いきみ)が低下するために排便できないことによるもの、④便意を常に我慢したり、みだりに便秘薬を使用したりすることにより直腸の知覚が鈍感になったもの(直腸型便秘)が多いです。[( )内は便秘の分類を示します。]
便秘の診断基準
(1) 排便の4分の1超の頻度で、強くいきむ必要がある。
(2) 排便の4分の1超の頻度で、兎糞状便または硬便(BSFSタイプ1か2)である。
(3) 排便の4分の1超の頻度で、残便感を感じる。
(4) 排便の4分の1超の頻度で、直腸肛門の閉塞感や排便困難感がある。
(5) 排便の4分の1超の頻度で、用手的な排便介助が必要である(摘便・会陰部圧迫)
(6) 自発的な排便回数が、週に3回未満である。
6項目中2項目以上が該当すると「便秘症」と診断されます。
腸の運動性が悪い便秘に鍼治療を
大腸の運動を腸音(グル音)として測定。足三里と合谷への鍼刺激でグル音(振幅)が大きくなります。つまり大腸の運動が活発になったことを示します。⇒排便力が高まります。
下剤を毎日10錠服用しないと排便できない頑固な慢性便秘症の女性(38歳)。週1回20回の鍼治療で5錠まで減量。鍼治療で腸の運動を改善して下剤を減らすことができた。